学生・研修医の方へ

子どもたちを取り巻く
様々なこころの問題を
身体・心理・社会・
環境・倫理など
あらゆる視点から診療します

教育体制

日本の子どものこころの診療は、以前から、こころの問題を専門とする小児科医と、児童思春期を専門とする精神科医によって担われてきました。そのような歴史的背景に鑑み、“子どものこころ専門医”は、小児科専門医と精神科専門医の双方を基盤領域とするサブスペシャリティ専門医として位置づけられています。

“子どものこころ専門医”は、小児心身医学・発達行動小児科学・児童思春期精神医学などを基礎として、子どもの精神疾患、神経発達症(発達障害)、心身症、不登校、虐待など、子どものこころの諸問題にとそれに関連する身体症状に対して、身体・心理・社会・環境・倫理など、子どもを取り巻くあらゆる視点から総合的な診療を行うことができる専門医です。名古屋市立大学病院は"子どものこころ専門医"を取得するための研修プログラムである「名古屋市立大学病院子どものこころ専門医研修施設群(精神系)」ならびに「名古屋市立大学病院子どものこころ専門医研修施設群(小児系)」の基幹施設となっています。

"こころの発達診療研究センター"では、神経発達症を専門とする精神科医・小児科医・公認心理師の指導のもと、神経発達症(発達障害)の患者様のライフスパン全体を通した診療・支援を学ぶことができます。また、児童期の精神疾患や心身症の診療、知能検査や心理検査の解釈、福祉機関や教育機関との連携について学ぶことができます。さらに名古屋市立大学病院の精神科・小児科と連携し、成人期の精神疾患や緩和ケア医療などの精神科診療、基礎疾患のある児の発達支援や周産期の母子保健などの小児科診療に関して学ぶことができます。

また、児童精神科病棟を持つ病院、児童相談所や療育センターなどの福祉基幹、地域の総合病院など、様々な施設が連携施設となっており、虐待や非行の症例、児童精神科病棟への入院が必要な症例、療育など発達障害の早期支援や子育て支援が必要な症例など、幅広く経験することができます。

これまでの経験や希望する専門分野により、適宜、研修の進め方を決めていきますので、お気軽にご相談ください。

先輩の声

子ども達が
生きづらさを抱える中で
多くのニーズがある分野

永田 浩貴

精神科医、平成27年卒
  • どうして「こころの発達」の
    分野に興味を持ちましたか?

    私は2年間の初期研修の後に精神科を専攻し、精神科専門医と精神保健指定医を取得したうえで、子どものこころ専門医の研修をスタートしました。学生時代から精神科には関心がありました。初期研修で発達外来を見学し、特にこの分野に強く興味を持ちました。小児科か精神科かの選択は非常に迷いましたが、成人も含めて「こころ」の診療に惹かれたので精神科を選択しました。成人の精神科診療でも、発達特性や家族背景が病状に与える影響は大きく、精神科一般の診療を行うなかでより「こころの発達」の診療の面白さや必要性を感じました。

  • 現在はどのように研修を
    行なっていますか?

    三重県立子ども心身発達医療センターで研修を行っています。三重県立子ども心身発達医療センターは小中学校が併設されており、時間をかけて子どもの育ちを大切にした入院治療を行っていることが特徴的な施設です。

    入院治療では発達障害の特性や不十分な愛着、家族の問題などを抱えた子どもたちに対して、丁寧に関わったうえで評価、治療を行っていきます。それぞれの子どもの特性にあわせた課題設定や治療的関わり、ケースワークを行いその子が地域の中で生きやすくなるように努めていきます。子どもとしっかりと関わっていくことの難しさ、大変さはありますが、入院の後半や退院後に成長して自信を持った子どもたちの表情を見られるのはとても楽しいです。地域連携にも力を入れており、「こころの発達」を支えていくという点で充実した研修ができています。

    自分自身も子育てしながらの研修ではありますが、育休や院内保育所なども整っており、働きやすい環境でもあります。

  • 「こころの発達」の分野に
    興味のある若手の先生に一言

    「こころの発達」の分野での診療は、関係機関との調整や家族全体の評価など大変なことも多くありますが、子どもが実際に成長していく姿を見られることが一番の面白さだと思います。強い特性や困難な背景を抱えた子どもたちは、時に私たちの予想をはるかに超えた成長を見せてくれます。

    社会全体の生きづらさから多くの子ども達が生きづらさを抱える中で、多くのニーズがある分野です。病院や診療所のほか地域の機関も含め活躍の場が広く、いろいろな働き方もあります。多くの先生方に「こころの発達」の分野に関心を持っていただき、足を踏み入れて頂けると嬉しく思います。

あの時先生に出会えてよかった
と言ってもらえるような
医師を目指して

滝藤 明日香

小児科、平成28年卒
  • どうして「こころの発達」の分野に興味を持ちましたか?

    学生の臨床実習で児童精神科の外来を陪席した際に、非常に興味深い分野だと感じ、この分野を勉強したいと思っていました。当時の私は、発達障害の知識は乏しかったですが、指示の通りづらい子どもに的確に話しかけ、親の訴えにも丁寧に答える診察の様子を見学し、患者本人だけでなく、家族にも寄り添う診察に魅力を感じました。

    初期研修での小児科ローテ―ト中に、学校に馴染めずに不登校になった子どもを担当しました。当時は話を聞くことしかできませんでしたが、今後、こころの発達を学び、少しでも力になりたいと心に決めました。初期研修を終え、小児科に進むか精神科に進むか、非常に悩みました。身体疾患を併存する患者さんも多い分野であり身体全体を診ることができるようになりたいという気持ちと、1番は"子供が好き"という気持ちが決め手になり、最終的には小児科を選びました。

  • 現在はどのように研修を行なっていますか?

    名古屋市立大学病院小児科に所属し、週に3回、大学病院や療育センターで心理発達外来を担当し、その他の時間は一般小児の病棟管理を行っています。数は多くないですが、摂食障害などの入院症例を担当することもあります。大学での研修は、大学ならではの慢性疾患に併存する発達障害を診療できたり、入院症例を経験できたりと非常に濃密な研修です。また、方針に迷った時には指導医にすぐに質問ができ、安心して診療を行うことができます。さらに、悩ましい症例は精神科の先生方にご助言をいただくこともでき、とても恵まれた環境であると感じます。

    昨年、息子が誕生し、それに伴い産休育休を取得し、一時的に研修を中断しました。復帰後、症例に飢えている私に数日で入院症例を担当する機会をいただき、すぐに現場に戻ることができ、非常に恵まれているなあと実感しました。育児と仕事の両立は大変なこともありますが、周りの先生方のサポートも手厚く、どちらも諦めることなく継続することができています。

  • 「こころの発達」の分野に興味のある若手の先生に一言

    「こころの発達」の分野は、"治る"疾患ばかりではないという点に、難しさを感じることもあります。保護者の要求に応えられない時には、もどかしさを感じる時もあります。一方で、早期発見・早期介入することで、将来社会に適応できる手助けができる点にこの分野の魅力を感じています。患者さんを幼少期から診療し、人生を共にすると言ったら大袈裟ですが、あの時先生に出会えてよかったと言ってもらえるような医師を目指して、精進してまいります。

    スペシャリストの先生方のもとで研修ができ、研修を行う環境としては最高です。ぜひ名古屋市立大学病院で一緒に「こころ発達」の分野を学びましょう。