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坂田昌嗣が米国心理学会(APA)年次大会での発表報告ー「周縁でも中心でもない」視点から、心理療法研究の「脱植民地化」を展望する

2025.08.07

坂田昌嗣講師が、米国心理学会(APA)年次大会(デンバー)にて開催された第17部会(カウンセリング心理学)国際シンポジウム「Decolonizing Western Interventions in Foreign Countries: Research」に登壇しました。

発表では、心理療法研究における国際的な構造的不均衡に焦点を当て、

  • 心理療法のエビデンスが北米・西欧の研究と英語文献に偏っている現状

  • 家元制度に似た国際的な認定制度が、現場の臨床家や非英語圏の研究者のアクセスを妨げている問題

  • こうした状況を打開する一例として、日本の一般医療現場における不眠症への短時間介入「InsIGHTS試験」の紹介

  • マインドフルネスの「里帰り」ともいえるアトピー性皮膚炎への応用研究(岸本早苗氏ほか)の紹介

などを通じて、脱植民地化(Decolonization)を“批判”にとどめず、“実装”へとつなげていく実践の方向性が示されました。

特に、InsIGHTS試験では、認定資格や専門家制度に頼らず、内科医が日常診療の中で行う心理教育的アプローチの実装に挑戦しています。これは、専門職の人材が限られる発達障害支援の現場にも応用可能なモデルであり、心理介入をより多くの子ども・家族に届けるうえで重要な示唆を含んでいます。

今後も当講座では、こうした国際的な議論や実装研究を通して、発達障害に関わる支援の質とアクセスの向上に貢献してまいります。